また『ルバイヤート』は豪華本に
『葦の葉笛』は特製本にされました。
この本の「仕様」も書かれていました。
挿絵は北村ひとし氏から下村良之介氏の銅版画に換わりました。
技術者を日本で選んで督励しておられました。
材料もそれぞれの最高のものにしたと聞きました。
表紙用羊皮紙は輸入Hewit & Sons Ltd から。
表紙用モロッコ皮は伊藤商店。
マーブル紙手染めは先生と小沢真奈氏。
そして京都の宮川一夫氏のもとで製本されました。
先生はヨーロッパの製本の知識にも詳しく、
羊皮紙やモロッコ皮マーブル紙の語源と歴史からひも解いています。
「しかし普通羊皮というのは、
日本で羊皮(やんぴ)と呼んでいる手袋や手帳などに使われる安価ななめし皮、イギリスではSkiverと言っているものを考えがちですが、それとは全く違って、乳白色の硬い皮です。
この名前は原料よりも、製法によるものです。
羊皮紙は大変高価で扱い難いので、西洋人はその代用として、
日本の手梳きの局紙をJapanese Vellumと呼んで愛用しています。
この和紙は楮とみつまたから作られた固くて美しい紙で、
上製本の印刷用紙として世界的に名声がありますが、
肝心の日本人は余り知らず、高価なため
今ではほとんど製造されていないのは残念なことです。
そのほかにも日本人の悪い癖で、わが国では、羊皮紙、
ヴェラン、パーチメンなどという名を僭用した粗末な用紙が
製造市販されているので、まぎらわしくて困ります。」
「羊皮紙は最高級の製本用皮革、高度の製本技術を要するため、
わが国ではまだ一度もその製本に成功した人はありません。
(関川左木夫氏著「本の美しさを求めて」)
それを始めてやりとげたことを、私たちは大変誇りとしています。
この皮は・・半永久的ですが、・・・・
これに金押をするのも難しいことですが、
私たちは真鍮凸版で純金箔を押しました。
小口の金箔も純金であることにご注意ください。」
「従来日本で使われていた牛革や羊皮はなめしと染色技術の悪いため
せいぜい10年位しか持ちませんので、革製の本を
信用しない方の多いのは無理のないことですが、
本当のモロッコ皮なら羊皮紙に次ぐ耐久性を持っています。」